営業 あれやこれや

(株)ムトウの営業スタッフの心構えを示すお話しの数々をお楽しみください。

これらは「ムトウグループの営業とは、どの様な心掛けで仕事に取り組んだら良いか」と言う社内研修での資料が基本になっています。通常、この様な内容の物は公開する事は少ないのですが、あえて「ムトウグループの営業スタッフの基本はこうであります」と言うことで、人事部の了承の元で公開しています。

大学病院は、病床数、診療科目数、ドクター数が多く、さらに基礎研究部門数も多いので、納入機器数も膨大になります。必然的にあらゆるケースに対応しなければなりません。

医療関連機器の進歩は、非常に速いスピードで動いていますが、ここ数年のヒット商品はDNAシークエサー。遺伝子の配列を調べる機器で、1台につき数千万円という高価なものです。インターフェロン、クローン、エイズウィルス、ニューロサイエンス、あるいは遺伝子病に遺伝子治療といった言葉が、最近では頻繁に眼につくようになりましたが、こうした基礎医学の分野では欠かせない機器です。この他にもレントゲン関連機器、人工透析装置、MRI、CTスキャンといった画像診断装置など最先端の機器を取り扱っています。

ドクターは最新医療機器の情報について、非常に敏感です。ですから、新しい機器に関してメーカーとタイアップして、実際にドクターに操作をしてもらい、その機能や性能を知ってもらうワークショップを開催しています。デモンストレーションできる機器の台数などによって、参加人数に制限がありますが、ドクターからは好評を得ており、営業の第一ステップとして重要なイベントです。

国立及び公立の大学病院は、国や自治体によって運営されますから、予算面の管理や配分は、毎年行われる予算審議の行方によって左右されます。ですから営業政策を考えるときには、各分野の予算配分に関する情報収集も重要な仕事です。マスコミはもちろん、メーカや担当クライアントなどあらゆるチャンネルを通して情報を集め、的確な営業目標を設定して、新たな機器販売の企画提案を行わなければなりません。

ドクターは自分のアイデアを大事にします。特に基礎研究部門では顕著で、使用する機器もメーカー1社のみでは対応しきれないのが普通です。従っていくつかのメーカーを組み合わせて、研究目標に最も適した機器システムを構成していくことが重要になります。ドクターと話し合いをして機器を取捨選択し、システムの構成図を作成、提案する作業を行います。その時ポイントになるのは、似たような研究情報をいかに多くドクターに紹介できるかです。ですから、例えば、工学部の研究室で採用しているアイデアを医学部にリンクさせる、といった水平思考をします。その結果出来上がるのが、世界に一つしかないオリジナルの機器システムです。

大学病院担当の営業は、臨床部門では各専門別に医局と病棟中心に回りますが、同時に検査部門や基礎医学部門の研究室も対象となります。しかし、これも厳密に分類して担当分野を決めているわけではありません。信頼関係が重視されるので、全く違う分野のドクターや研究者から指名されて営業担当になる場合もあります。また営業先としてフォローしておかなければならないのが、医学部や付属病院以外の各学部。研究対象によっては、ムトウで取り扱う機器類が欠かせぬことがあります。

担当のドクターや研究室スタッフは、遺伝子、エイズ、ガン、あるいはニューロサイエンスなど様々な分野で、世界の最先端を走る研究を行っています。将来的にはノーベル賞受賞というような可能性に満ちた研究がテーマになっていますから、非常に繊細な対応が要求されます。同時にそれぞれの研究はオリジナリティの高いものですから、採用している機器システムのアイデアを他のドクターに情報として提供してはならないことがあります。必ず許可を得てから情報を提供してください。信頼関係を崩してしまっては、大変なことになります。

医局や病棟などを回るときには、ネームプレートを付けていますので、時には患者さん個人から直接、声を掛けられることがあります。気管支系の疾患治療に使用する吸入器、電動ベッドといった機器、あるいは人工肛門などの装具が退院後に必要なので購入したいという依頼です。そうした場合、親切に応対して販売することがあります。医療スタッフばかりか患者さんからも、信頼を受けているのです。

ある支店で緊急に必要な機器を札幌から運ぶのに、パトカー先導で輸送したという話があります。あるいは誕生したばかりの新生児に保育器が必要になり、ムトウならあるだろうと医師から依頼を受け、緊急に運んだという話もあります。その後、担当の医師から「母親が直接、彼にお礼がしたい」と言っていると伝えられたそうですが、その社員は断ったとか。当然の仕事をしただけですから、あらたまってそんなことをされるまでもないと思ったそうです。常に生命にかかわる仕事をしているのだ、という緊張感をこんな話から感じます。

専門分野に分かれて営業を展開していきます。大学病院以外の医療機関も営業対象として重要です。さらに、新規開設病院への企画提案、医療現場で使用する高付加価値商品の開発など、専門別に仕事が行なわれます。

クライアントをごく一般的に分析すると、次のように類型化されると言われています。開業の先生の場合は経営者という意識も強く、医療機器の評価なども機能ばかりか数字に関することまでも詳細に確認してきます。このあたりは、大学病院のドクターに共通する学者タイプというイメージとは少々異なります。担当科別にみると、経験、実績を重視するのが内科系のドクター、最新技術、最新医療機器に敏感に反応するのが外科系のドクター。またレントゲン技師さんは、上下関係が厳しい世界で、いわゆるプロ意識が顕著に見られます。こうしたクライアントの分析もセールストーク、さらには信頼関係を築く上で重要な要素になります。

病院を新規に開設する場合に、設計の段階から参画して蓄積してきたノウハウを提供します。最新医療機器のサンプルの提示、設備面での機能的なレイアウトのアドバイスなど、トータルな視点から的確に企画提案を「コンサルティング事業部」のスタッフと共同で行ないます。高額な医療機器の場合には、リース契約の方がベターであるとかレントゲン室の最良のシールド方法はどうとかいった経営面から技術面までもがその中に含まれてきます。

担当によっては週単位のスケジュールで、クライアント回りをする出張をしなければなりません。診断機器販促部の営業スタッフの場合には、全道をブロックに分けて各担当ごとにカバーします。ですから営業をするときには、交通手段もクルマかあるいは航空機、鉄道など営業目的によって自分で選択し、日程やルートも自分の判断で決定しなければなりません。いかに効率的に動けるかを考慮した行動計画が必要です。

営業スタッフの仕事は、クライアント回りをするルートセールス的要素ばかりか、新規に取引関係を結ぶための飛び込み営業も求められます。そのために見ず知らずの人ともすぐに親しくなれる人間的魅力が大事になります。こうした魅力、雰囲気を体得するために、例えば酒場で隣に座った初対面の人と言葉を交わし親しくなる練習をしてみるのもいいことです。つまり営業という仕事はいかにうまくコミュニケーションをとり信頼できる人間関係を築いていけるかがポイントになることを忘れないでください。

営業網は北海道ばかりか、東北・関東首都圏、九州に広がっています。各地域によって市場環境に違いがありますので、当然、営業戦略も担当分野も地域事情に合わせて計画します。札幌圏の場合は医療機器、理化学機器、福祉機器と専門別に部門が分かれ、かつ大学、官公庁、開業医と分かれて営業活動が展開されます。地方支店・営業所はエリア内にある全ての機関が営業対象になり、個人がありとあらゆる分野の機器を取り扱います。例えば、ある支店などは国公立病院から私大、開業医をターゲットに新規開拓の営業が中心となります。人口に比して病院数が少ないので経営状態もしっかりしているのが特徴ですが、黙っていても注文はこないので、同業他社が入り込んでいるところでも、ムトウの歴史と実績を武器に営業を展開、売り上げ増を図ります。

営業企画部は、第一線での営業活動をサポートするセクションです。ここでは医療現場で利用される様々な製品に関して、高付加価値のついたものに改良したり、あるいは新しいアイデアでニーズを掘り起こすような商品の開発を行なっています。開発された商品はOEM化を図り、メーカーで製造した製品をムトウブランドの販売チャンネルに乗せます。高収益が望め、かつ海外向けの戦略商品にもなるという利点があり、絶えず、新製品の開発を推進しています。実際に営業OEM化され販売された商品には、病棟で使用される“湯たんぽ”にヒントを得たスポット的熱源製品があります。トリガーをひくと化学反応で57度まで熱くなるもので、再利用が60回程度まで可能というもの。現在は、リハビリの分野でも患部を温める用途に利用されています。

新たな取引関係を結ぼうと狙いを定めた対象については、まず下調べをすることからスタートします。そのポイントは、まずドクターの出身大学を知ること。診療科目では何が得意なのか、医療スタッフの陣営はどんな具合なのか、といったことです。それから実際に足を運び、どんな医療機器、設備を持っているかを観察します。こうした予備知識を頭に入れた後、自分の得意とする分野で押していくようにすると、最初は小規模な取引でも注文を出してくれるようになります。

営業活動の一環として重要なのは、新製品の機能、操作方法を学ぶ講習会や展示会に足を運ぶことです。医療機器は、最先端技術の粋を集めたもので、日々新しい製品が出てくるといっても言い過ぎではないほど。ですから、メーカーが新製品のPRのために開く講習会などには積極的に参加して、自分の目で確かめることが重要です。あるいは、定期的に開催される展示会にも出かけて、同様な機能を持つ各メーカーの新製品の長所や短所などを勉強してください。

クライアントは診療得意科目を中心に据えた専門病院から、個人開業医まで多岐にわたっています。営業スタッフは、だいたい一人につき15件ほどを担当するのが一般的ですが、取扱高や担当エリアによってはクライアント数が多少違います。また診療科目によって担当が分けられることはなく、各自が種類の違う専門病院を任されています。その点からすると、ドクターよりも広い知識が要求されることになります。

医療現場の最前線で活動する営業スタッフとして、機器に関連する最新情報は常にインプットしておかなければなりません。社内的に新製品に関する各メーカーからの情報が企画課に集まり、そこから各営業スタッフに知らされます。社外的なチャンネルとしては、まず営業活動を展開しているクライアントから知識を吸収することがポイント。また担当ドクターに同行して学会に出席したり、学会で出す論文集を読んだり、ドクターを社内に招いたセミナーなどで勉強を行ないます。メーカー側から技術者を読んで実際に手術のシュミレーションを自分の手で行なうといった知識習得も実施されています。こうした機会には担当分野が違っていても、時間が許す限り自由に参加して多いに視野を広げることが大切です。

入社して確か1年半ほどたってからのことです。ある施設が改築にともなって、設備の見直しを図るというので、そこに全面的にレントゲン機器納入の契約を獲得してみろ、と一人で営業に出されました。注文がなくてもとにかく通っていた営業先で、他社はベテランの営業スタッフが入っていました。製品の説明などをとにかく一通り終えて、あとは受注できるか結果待ちをしているときに、その施設の技師長から私に電話が入りました。「明日は笑ってきなさい」と。その通り行ってみると、私が受注できる決定が下されていたのです。その時は本当にうれしかったです。営業の基本は笑顔と話題。断られても常に「ありがとうございます」とお礼をすることだと体得しました。

医師ばかりか行政や民間企業の研究者もお客様です。病院等医療現場以外にも、官公庁の各種機関に従事する研究者や救急隊員などの公務員、さらに医薬品関連、半導体などの精密機器関連の民間企業で活躍する技術者も営業対象です。

最近、救急の医療体制を強化することから、医療行為が施せる救急救命士制度が確立されました。それにともなって救急車も患者を医療機関に搬送するだけの役割から、治療ができるシステムを持った高規格救急車という形に変わり、各自治体で導入されるようになりました。ムトウでは理化学機器事業部の営業スタッフが中心となって、札幌をはじめ各自治体の高規格救急車の装備の充実にかかわっています。自治体関係者、医療関係者、自動車メーカーと一体となって車両内に設置する医療機器を選択し、システム作りを行ないました。輸液ポンプシステム、人工呼吸器、酸素吸入器など応急処置が可能な機器設備のシステムを機能的に配置して、治療が最も有効にできるように配慮されています。同時に自治体が設立した救命士養成の訓練施設にも、高規格救急車と同じ仕様の医療機器設備を納入、高度な医療体制の確立に大きく貢献しています。

研究者の要求によっては、既成の発想とは違った営業姿勢が必要になります。例えば、牛や馬などの大型動物の血圧測定。大学で動物研究をしている教授からの依頼で、人間用の測定器を使って今まで以上に詳細なデータの計測を試みたことがあります。メーカーからデモ用の機器を借りだし、測定のために腕に巻く加圧用の布も動物用に大きなものを準備。足に巻き付け、実際に加圧して測定を開始したら「測定できません。動かないで下さい」というメッセージ。測定をじっと見守っていた一同、笑い出しましたが、何度も挑戦することで正常に機器が作動、見事に血圧測定できました。このように新しいことをやってみようという研究者の姿勢に真摯に応えることも、営業スタッフの大事な仕事と考えて下さい。

理化学機器事業部の営業スタッフが取り扱う商品は、細かいものは試験管やシャーレといった消耗品から、各種分析機器、遠心分離機、各種の研究に欠かせぬ純水製造装置、電子顕微鏡に分光光度計といった光学機器などです。特に最近最もヒットした商品といわれるガスクロマトグラフ質量分析計(略称マス)は、水道水の残留農薬を調べたりする物質の質量分析機器として、世界的に主流となっている高額なものです。

医療機器、理化学機器のほかに、例えば、実験材料として使用するニジマスや金魚を依頼されることもあります。あるいはこんな話もあります。ある試験場で落雷のために停電になり、長年研究材料として保存してきた菌が、フリーザー機能の故障でダメになりそうになったことがあります。その時に研究者から電話が入り、ドライアイスを大量に持ってきて欲しいとの依頼。担当の営業スタッフは、ドライアイスを買いに走り回ったのです。それ以来、雷がなると停電時などのバックアップ体制を、クライアント側で取っているかどうか気なってしかたないというわけです。クライアントに対するこうした対応が信頼関係をより強固にし、新しいニーズを引き出すことにつながることを忘れないで下さい。

営業対象となる研究者の性格を分析すると、非常に合理的な姿勢を持っている点が共通しているようです。中には、世界的にトップレベルと評価される研究者もいますが、一般的には一人で研究を進めることは少なくチームを編成して行なうグループ研究が中心です。その点から上下関係よりも、横のつながりを大事にしています。少々威圧的かなと思える研究者でも情報を得ることに関しては、冷静に対応してくれますので、正確かつ簡潔に情報整理をしてセールストークの材料にして下さい。

営業スタッフの売上目標達成にはどうしたらよいかを企画し、サポートしてくれるセクションがあります。営業企画課がそれで、基本的にはメーカーに対する窓口になり、新製品情報のデータ管理、それに関するキャンペーン企画立案、商品に関する市場調査などを行ない、第一線の営業スタッフの活動をより強化するサポート業務を展開しています。

営業スタッフの中から、米国の現地法人に出向することがあります。米国各地で開催される展示会や学会に足を運び、日本国内に輸入して販売できそうな最先端機器や製品をピックアップするのが目的です。医療機器や理化学機器では、米国の方がまだ技術力が高く優秀な製品が多く出ているというわけです。

基本的な営業政策を立案する上で、行政の年間サイクルに準じることがポイント。どの研究項目にどれだけ予算が配分されるかという情報分析をベースに、年度当初から年度末までの営業展開を計画します。取扱金額に応じて、官報に掲載されますので、こうした情報も常に把握して営業方法を考えなければなりません。

医療機関ばかりか、官公庁に所属する研究所に試験場、さらに民間企業まで、いうなれば“生物“にかかわるあらゆる機関が営業対象になります。この分野では、理化学機器事業部の営業スタッフが中心に活動していますが、直接、人間にタッチしない機関でもムトウの扱う機器類が活躍しています。その意味で営業展開すべき対象はまだまだ潜在的に存在しますから、情報を素早くかつ的確にとらえ、新しいニーズを見つけることが要求されます。

医療機関以外のクライアント

民間

  • 総合商社、リース会社、印刷会社、電力会社、鉄道会社、メーカー:紙・パルプ、鉄鋼、医薬品、食品、石油化学、水産、農林業など

自治体

  • 北海道庁、東京都庁他各県庁、札幌市等各自治体、衛生研究所、公害防止研究所、血液センター、がんセンター、通産省、農水省、科学技術庁など